ビーちゃんのこと
2024年8月19日午後6時、当院のスタッフに見守られながら、ビーちゃんは息を引き取りました。
2年前の11月14日、当院の近くのタップスイミングスクールの交差点で放浪しているオスのビーグル犬を保護しました。
保護当時、尾には大きな腫瘍ができていて自潰していました。また全身が皮膚病で重度の外耳炎も起こしていました。
手術で尾の腫瘍を切除して、皮膚病の原因である甲状腺ホルモンの不足を毎日の投薬で補い、
耳洗浄とシャンプーを頻繁に行うことで、皮膚と耳の状態は格段によくなりました。
ビーグルなので誰かが飼っていたはずだから、いつか飼い主が現れるかもしれない、との思いから、
院内では名前はつけずに「ビーグルくん」とか「ビーくん、ビーちゃん」と呼んでいました。
しかし飼い主が一向に現れることはありませんでした。
おそらく元の飼い主のところではご飯を与えられるだけの生活だったようで、
性格は最初は食べることにしか興味がなく、散歩もしてもらったことがないみたいで興味がなく、
目が覚めてお腹が空くと「ぱうーん」と鳴いて呼ぶ、食べておトイレを済ませるとまた寝る、の繰り返しでした。
しかし、次第に病院スタッフに心を開くようになって、「おすわり」「お手」「まて」のコマンドもできるようになり、
オモチャで遊ぶことも覚えて、得意げにお気に入りのフリースの毛布をくわえてアピールするようになりました。
そんな、当院で幸せそうに毎日を過ごしていたビーちゃんでしたが、今年の7月に右脇にしこりがさわるようになりました。
7月10日に手術でしこりを摘出して病理検査に提出したところ、しこりは腺癌が転移したリンパ節と診断されました。
2年前に切除した尾の腫瘍は悪性のアポクリン腺癌で完全に切除されたはずでしたが、どうやらそのガン細胞がわずかに生存していて
リンパの流れに乗って右脇のリンパ節に転移していたのだろうというのが病理医の先生の意見でした。
それから、10日後にはガンは想像以上に進行が早く、摘出したリンパ節の周りに播種して皮膚がボコボコと腫れるようになり、
7月末には咳をするようになりました。レントゲンを撮ったところ、すりガラス状にガンの転移像が肺全体に広がっていました。
それでもまだその時点では毎日オモチャで遊んで、食欲も旺盛だったのですが、次第に息苦しい感じがひどくなっていきました。
最後の日は大好きなご飯も食べられなくなり、酸素室に入れても苦しそうに浅く速い呼吸をしていました。
午後5時におトイレに出すと息も絶え絶えになりながら、ちゃんと用を足すことができました。
酸素室に戻って、真っ青な舌の色がピンク色に戻って、集まったスタッフの顔を一人一人じっと見つめて、少し安心したようでした。
それがビーちゃんの最期の笑顔でした。
病院の診察が午後6時前に終わって院内の片付け・掃除が終わり、スタッフがビーちゃんの様子を見にいくと、
さっきまで速かった呼吸がゆっくりとなり、スタッフみんなに見守られながら、やがて呼吸が静かに止まりました。
ビーちゃん、ありがとう。おつかれさま。