感染症をコントロールする
治らない皮膚病で第一に疑わなければならない原因は、感染症です。
感染症は、寄生虫の感染、真菌(カビ)の感染、細菌の感染、の3つに大きく分けられます。
寄生虫で皮膚に感染するもののうち、マダニ、ノミは肉眼で見てわかりますし、駆除は容易です。
ノミ
マダニ
動物病院で処方されるノミダニ駆除剤を塗布することで駆除・予防ができます。
また、内服のノミダニ駆除薬はシャンプーを頻繁にするワンちゃんに効果的です。
アレルギー性皮膚炎の原因の1つにノミがありますので、ノミダニ駆除剤の定期的な塗布がまず皮膚病の診断と治療の第一歩です。
次に肉眼に見えない寄生虫が原因の場合です。これはよく見逃されることがあります。
必ず皮膚の検査をしなければ見つかりません。
えいひとよばれる器具やメスの刃で皮膚の表面をカリカリとはぎとって顕微鏡で病原体がいないかをチェックします。
この場合、問題となるのは、ヒゼンダニ(疥癬)とニキビダニ(アカラス、毛包虫)です。
ヒゼンダニは接触感染でうつり、皮膚にトンネルを掘って産卵するためはげしい痒みを出します。
一方、ニキビダニは正常な皮膚の毛穴にも少数寄生していますが、皮膚の免疫トラブルにより過剰増殖して皮膚炎の症状を出します。
どちらもフィラリア予防薬にも使われる駆虫剤を使って駆除しますが、フィラリア予防に使う用法・用量とは異なります。
また発見が難しい場合もあるため、「診断的治療」といって駆虫剤を投与して反応を見る場合もあります。
実際、ヒゼンダニ感染やニキビダニ感染がアトピーと誤診されることがあるため、その可能性を排除するために診断的治療は大きな意味があります。
ヒゼンダニ
ニキビダニ
最も皮膚病で多い原因は、真菌感染と細菌感染です。
皮膚病の原因となる真菌には、ほかの動物から感染する皮膚糸状菌と皮膚常在菌のマラセチアがあります。
また皮膚の細菌感染で最も多いものは、皮膚常在菌であるブドウ球菌です。
皮膚常在菌であるマラセチアとブドウ球菌の過剰増殖が、多くの皮膚病に併発して症状を悪化させているケースが多いため、これらの確認をすることが重要です。
皮膚表面にセロハンテープを貼り付け、それを染色して顕微鏡で観察することでマラセチアとブドウ球菌を確認することができます。
マラセチア
ブドウ球菌
これらが確認されたら、マラセチアに対しては抗真菌剤を、ブドウ球菌に対しては抗生物質を最低2-3週間しっかり服用することで、これらの増殖を抑えることができます。
ただし、以前から何度も抗生物質の治療を受けている場合には抗生物質が効かなくなっていることもあるため、
状況によっては薬を変更したり、どの薬が効くかを調べる検査を行うこともあります。
なお、皮膚糸状菌は毛の中を好んで増殖するため、毛を抜いて顕微鏡で確認したり、
特殊なライトで毛が光るかどうか確認したり、毛の培養検査を行うことで皮膚糸状菌の有無を確認します。
皮膚糸状菌
治療法は抗真菌剤を長期に服用することです。
多くの皮膚病では細菌感染やマラセチア感染が合併しているので、
これらをコントロールすることでかゆみや炎症はかなり軽減するはずです。
逆にいえば、合併している感染症を放置したまま、
アトピーやアレルギーの治療やスキンケアをおこなってもよくなるはずもないのです。
様々な原因で皮膚のコンディションが悪くなっているワンちゃんにとって、感染症が再発することはよくあることです。
その都度、適切な薬物治療が必要になりますので、獣医師の指示をしっかり守って薬を服用してください。
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