食事アレルギーを除外する
感染症を抑えてもなおかつ痒みと赤みがある場合は、アトピーやアレルギーを疑います。
「アトピー」とは、生まれつき皮膚のバリア機能がうまくできていないために起きる病気です。
バリアが低下した皮膚のすきまから環境中の物質(抗原)が入り込むことで免疫細胞が過剰に反応して、アレルギー反応が起きると、「アレルギー性皮膚炎」となります。
よってアトピーとアレルギーはほぼ同義語として使われることが多いですが、
アトピーは環境中のアレルギー物質が原因であるのに対して、アレルギー性皮膚炎はそれ以外の原因も含みます。
環境中以外のアレルギー物質として代表的なものが、ノミ、マラセチア、そして食物です。
ノミとマラセチアは感染症ですので、食事アレルギーについて説明したいと思います。
食事アレルギーは、食物中のタンパク質がアレルギー物質として反応して、皮膚にかゆみや赤みを出します。
タンパク質の構造は食物の原料によって異なるため、たとえば牛肉のタンパク質にアレルギー反応が出る場合は牛肉アレルギーということになります。
なお食事アレルギーとアトピーを見た目で区別することは困難です。
環境中からアレルギー物質を見つけ出してそれを完全に取り除くことは難しいですが、食事中からアレルギー物質を取り除くことは不可能ではありません。
では、アレルギー物質をどうやって見つけ出すかですが、
これはアレルギー物質を除いた食事を食べて症状が消失するのを確認することに尽きます。
この診断を除去食試験といいます。
動物病院にはアレルギー源の可能性が少ない特定の原料のみで作られたフード(新奇タンパク食)や、
アレルギー物質となるたんぱく質そのものを化学的に分解したフード(加水分解食)、
さらにはタンパク質を一切含まないフード(アミノ酸食)があります。
それらのうちのどれかを1-2ヶ月間、ワンちゃんにそのフードと水のみで生活してもらいます。
それで症状がなくなる、あるいは軽減したら、そのワンちゃんには食事アレルギーがあることがわかります。
さらにその後、アレルギーの原因と考えられる食材(たとえば牛肉、卵、鶏肉など)を1種類ずつ、そのフードに加えていって症状が再発すれば、アレルギー物質を特定することができます。これを再負荷試験といいます。
除去食フード
除去食試験は判定に最低1ヶ月はかかりますし、特殊なフードしか食べてはダメですので、時間と労力と費用を要する検査です。
しかし、これで食事アレルギーがあることがわかれば、その後はその食材以外を食べていれば皮膚炎を良好にコントロールできるはずです。
また、アレルギー源がない加水分解食やアミノ酸食を食べたが症状が改善しなかったら、
食事アレルギーではないのであとはどんな食事を食べてもかまわないということになります。
除去食試験はアトピーか食事アレルギーかと見極めるために必ず実施したい検査です。
食事アレルギーを診断するもうひとつの方法として、血液検査(血清IgE検査)があります。
ただし、これは次に説明するアトピーもそうですが、
血液検査で陽性という判定が出ても、血液中にその物質に対応したアレルギー反応に関与する抗体(IgE)が存在するだけで、
本当にアレルギー源かどうかはわからない、という問題があります。
とくに食事アレルギーはIgEを介さないアレルギー反応でも起こるため、
血清IgE検査では確定診断できないことがわかっています。
リンパ球反応検査という特殊な血液検査を組み合わせることによって診断精度を上げることはできますが、
最も確実な方法は除去食試験なのです。
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